「楽天グループの特例子会社・楽天ソシオビジネス(株)の取り組みと精神障害・知的障害をお持ちの皆様にお願いしたいこと」

数年後に一般就労を目指す精神障害・知的障害をお持ちの皆様にぜひ知って頂きたいことを、楽天グループの特例子会社である「楽天ソシオビジネス(株)川島薫社長」にお聞きしてみました。
将来へ向けて非常に役立つ内容ですので、ぜひご一読頂ければと思います。

 川島薫(かわしま かおる)さんは東京都品川区のご出身で、生後半年後に先天性両股関節脱臼と診断を受けられました。1980年に教育事業出版社の経理業務に従事し、その後1985年出産を機に主婦業に専念。1999年に某空調メーカーのコールセンターのSVとして8年勤務した後にCADの訓練校に入学されました。訓練校の先生の薦めで障害者就職面接会に参加し、楽天と出会い、2008年楽天ソシオビジネス(株)に入社されました。2013年取締役、2018年副社長、2019年代表取締役に就任され、出世街道をまっしぐらに歩まれてきました。

 楽天ソシオビジネス(株)は2007年12月に設立され、現在は4事業部7グループ16チームの組織の中で200名ほどの障害者が働いています。業務内容は、グループ内社員の皆さんに対する手続き・備品管理・発送代行などの代行業務、総務・経理・人事・採用に関わる事務業務、WEBページ制作・メールマガジン作成・データベース作成・印刷などの販促業務、コンビニエンスストア・クリーニングショップ・植物工場の運営、など幅広くあります。障害者の社員の皆さんは自分自身の可能性を伸ばすために日々努力されています。

 しかしながら、楽天ソシオビジネス(株)に入社するには採用選考という大きなハードルがあり、また就職後もいくつもの壁が待っています。川島さんは企業への就職はゴールではなくスタートで、就労前の準備として以下の7つの力を身につけておくようにアドバイスされています。
①企業や職種を知り就労のイメージを持つ(業務内容を含めてまず幅広く知る)
②働きたい成長したいという気持ち(仕事へのモチベーションを作る)
③基本的なビジネスマナー(TPOに合わせた挨拶)
④柔軟性(変化に合わせる力)
⑤障害受容(自分の強み、弱みの自己理解)
⑥目的を持ち努力する力(指示待ちにならず自ら行動)
⑦他者との共存(他の障がい者も受け入れる)

 皆様が川島さんから学んで頂きたいこととして、企業就職への準備は早いに越したことはないということ、そして相当なトレーニング量と質が必要だということです。

 デジタルキャリアラボ新宿オフィスは就労継続支援事業所ですが、何年掛けてでも一般就職することを目的としています。年々一般就職できる人が増えているのですが、大きな課題があります。つまり、まだ一般企業へ送り出せている障害者数が少なく、一般就職後も定着できる方が少ないのということです。

 我々、就労継続支援事業所の支援のゴールは、少しでも多くの方を一般企業様へ送り出し、定着できるスキルとスタンスを身に着けて頂くことです。そのためには、価値の高い仕事を毎日、できるだけ長い時間取り組めるようにすることが必要で、事業者としては幅広い業務と教育を確保することが求められます。デジタルキャリアラボでは、パソコンを使ったオフィス業務に特化し、大手企業様を含めて様々な企業様から文字入力やデータ加工、画像加工、サイト登録などの仕事を頂いています。

 利用者様の特性を踏まえて分業しながら「量が質に変わっていく法則」を重視し、利用者様に取り組んで頂いてます。精神障害・知的障害をお持ちの皆様の経済的自立の実現を目指して、月間工賃のアップと企業就職を目指して、周到な準備ができるように応援していきます。

2018年6月出版
「障がい者の能力を戦力にする」(中央公論社)